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ある日突然、ECサイトのアクセス数が激減した…
原因が分からず、どこから手をつけていいか途方に暮れている
データ分析の重要性はわかるけど、具体的な進め方がわからない
あれは、忘れもしないある月のレポートでのことでした。一つひとつ手作業で作り上げた革財布。そのこだわりがお客様に伝わり、順調に推移していたはずのECサイトの売上が、前年同月比で40%近くもダウンしていたのです。血の気が引くとは、まさにこのことでした。
サイトへのアクセス数を見ると、メインの流入源であるGoogle検索からのアクセスがごっそりと減っている…。何が起きているのか全く分からず、まるで霧の中を手探りで進むような日々が始まりました。
この記事は、私がその暗闇の中から抜け出し、データ分析という光を頼りにアクセス激減の「真犯人」を突き止め、V字回復への道筋を見つけるまでの、全記録です。
原因不明のアクセス減…最初に疑った3つの「犯人候補」
アクセスが減った時、多くの人がまず考えるであろう容疑者が、私の頭にも浮かびました。一つひとつ、データという証拠を突きつけて検証していきました。
犯人候補①:SEO対策をサボった…?
正直、一番に疑ったのはこれです。「最近、工房の様子を伝えるブログ更新を少し怠っていたかもしれない…Googleからの評価が落ちたんだ」と。しかし、Googleサーチコンソールのデータを見て、私は自分の目を疑いました。
サイト全体の平均掲載順位は、前年の10.4位から9.3位へと、なんと1.1位も改善していたのです。
これには本当に驚きました。SEO評価はむしろ上がっている。つまり、犯人はここにはいませんでした。
犯人候補②:キーワードの需要が減った…?
次に疑ったのは、「そもそも、ハンドメイドの革財布を探している人自体が世の中から減ったのでは?」ということ。これもデータで確認しました。
確かに、「革財布 ハンドメイド」や店名での検索数は、去年より少しだけ減っていました。これは事実です。しかし、サイト全体のアクセス数が40%も減るほどのインパクトはありません。せいぜい10%~15%程度の影響です。これも本丸ではありませんでした。

だんだんミステリー小説みたいになってきた…
犯人候補が次々とシロ判定になり、私は完全に途方に暮れていました。しかし、諦めずにデータを眺め続けていたその時、ふと、ある奇妙な項目に目が留まったのです。
データの深淵に見た光明。「商品スニペット」という名の真犯人
サーチコンソールの画面をスクロールしていた時、「検索での見え方」という項目が目に飛び込んできました。そこには信じられない数値が記録されていました。
- 「商品スニペット」経由のクリック数が、昨年比で653クリックも減少していた
- さらに調べると、スニペットとして有効な商品がサイト全体でたったの8件しかなかった
「商品スニペット…?」
正直、最初はこの言葉の意味すらよく分かっていませんでした。しかし調べてみると、これがGoogle検索結果で評価の星(★★★★★)や価格を表示する、ECサイトにとって生命線とも言える機能だと知って、全身から汗が噴き出しました。
去年は多くの商品で表示されていたはずの「キラキラした特別な看板」が、今はたった8商品からしか出ていなかったのです。これでは、お店の前を通り過ぎる人が誰も足を止めてくれないのも無理はありません。
そして、最後の謎。「なぜ、その8つの革財布だけが特別扱いされているのか?」
私は、執念でその8つの商品を一つひとつ調べ上げました。そして、ついに、すべての商品に共通する、たった一つの特徴を見つけ出したのです。
その全ての商品に、「お客様からのレビュー」が1件以上投稿されていました。
この瞬間、すべての点が線で繋がりました。犯人は、この「レビュー」と、私たちの使っているECカートシステム「MakeShop」の仕様にあったのです。
謎はすべて解けた。MakeShopの仕様という「犯人の手口」
8つの革財布だけがGoogle検索で特別扱いされていた理由、それは「お客様からのレビュー」でした。この事実を基に、私たちが利用しているECカートシステム「MakeShop」の仕組みを調べたところ、犯行の全貌が明らかになりました。

犯人の手口は、実に巧妙でした。
MakeShopのシステムは、私たちの知らないところで、こんな風に動いていたのです。
Googleがサイトを見に来た瞬間に、MakeShopが「この革財布にレビューは投稿されているか?」を自動で判断します。
もしレビューが1件でもあれば、「この商品は評価★5です!」というGoogle向けの特別な暗号コード(構造化データ)を自動で生成してくれます。
もしレビューがなければ、この暗号コードは一切出力されません。Googleにはただの商品ページとしてしか認識されません。
つまり、「お客様からのレビュー」が、Google検索で目立つための「秘密の合言葉」になっていたのです。去年はもっと多くの商品にレビューがあったか、あるいはシステムの仕様が違ったのかもしれません。しかし、今はこのルールで動いている。これが、私たちが向き合うべき現実でした。
反撃開始!失われたアクセスを取り戻すための3つの作戦
原因がはっきりと分かれば、あとは行動あるのみです。目標はただ一つ、「全ての革財布にレビューを投稿していただき、サイト全体を再びキラキラさせること」。そのために、私たちは3つの具体的な作戦を開始しました。
1.購入者へのフォローメール施策:商品発送後、革が少し手に馴染んできた頃を見計らって「使い心地はいかがですか?」とレビューをお願いするメールを送る。
2.インセンティブの提供:「レビュー投稿で、革のお手入れ用クリームをプレゼント!」など、お客様がレビューを投稿したくなる特典を用意する。
3.同梱物による案内:商品に「あなたが育てた財布の物語を、ぜひお聞かせください」というメッセージカード(QRコード付き)を同梱し、投稿を促す。
これらの施策は、単にスニペットを復活させるだけでなく、お客様とのコミュニケーションを深め、サイトの信頼性を高めるという副次的な効果もありました。自分たちの工夫でお客様との繋がりを作っていく感覚は、データと向き合うのとはまた違ったやりがいがありました。
未来への投資:AI時代に選ばれるサイトになるために
今回の事件を通じて、私はもう一つ重要なことを学びました。それは、これからの時代は、Googleだけでなく「AI」にも評価されるサイト作りが必要だということです。

AIに評価される…?どういうこと?
今後、人々は「一生使える上質な革財布を教えて」とAIに質問して商品を探すようになります。その時、AIに「それなら、この工房のハンドメイド財布が一番ですよ」と推薦してもらうことが、これからのECサイトの生き残り戦略になります。
そのために、私たちは2つのことを始めました。
①サイトを「世界一詳しい革財布の説明書」にする:各商品ページに、「この革はどう経年変化する?」「手入れ方法は?」「カードは何枚入る?」といったお客様の疑問への答えを、先回りして詳しく書く。
②「私たちは専門家です」としっかり自己紹介する:サイトに、私たちの工房の歴史や革へのこだわり、職人の想いなどを詳しく書き、信頼性を高める。
これはAIのためだけでなく、サイトを訪れてくれたお客様にとっても、より親切で分かりやすいサイト作りに繋がると信じています。
まとめ:データは臆病な私たちを導く、最高のコンパスだった
アクセスが激減したあの日、私は途方に暮れていました。しかし、データという事実と向き合い、仮説と検証を繰り返すことで、思い込みや憶測ではない、確かな一歩を踏み出すことができました。
もしあなたが今、同じように暗闇の中にいるのなら、ぜひ一度、冷静にデータを見つめてみてください。そこには必ず、次の一歩を照らす光が隠されています。今回の私の失敗と発見の物語が、あなたの冒険のヒントになれば、これほど嬉しいことはありません。